解体工事は各工程に費用が発生します。
予算の見通しを立てるため、内訳の把握が不可欠です。
詳細な費用構成を理解すれば、工事の流れが分かり、安心して進行できるでしょう。
ここでは、代表となる6項目を順に解説します。

解体前に近隣トラブルを防ぐための重要な工程です。
周辺建物の外観や壁のヒビ、床の傾きなどを記録し、写真で保存します。
工事中に「ヒビが増えた」といった苦情が出た際、事前のデータが証明材料になります。
費用は全体の0.5〜1割ほどです。
近くに建物がない場合は、省略しても問題ありません。
調査員がいない業者では、外部の専門業者に依頼するケースもあります。
後のトラブルを避けるためにも、事前調査は大切です。

建物の周囲に足場を設置し、防塵シートで囲って作業環境を整える作業です。
粉じんやゴミが外へ飛び散らないように配慮し、防音対策も同時に行います。
費用は全体の1割ほどです。
場所によっては、作業員用の仮設トイレや休憩所を設置する場合もあります。
重機が出入りしやすいように鉄板を敷き、水道や電気の準備も進めます。
着工が近づいてきたら、責任者が書類を持参し、近隣住民を直接訪問して挨拶する段取りです。
土地所有者も一緒に訪問すると、より丁寧な印象を与えられるでしょう。

解体工事費は、人件費と重機の使用料が中心です。
全体のおよそ3割を占めます。
作業には、油圧ショベルを扱える作業員に加え、廃材の搬出を担当する人員も必要です。
建物が大きい場合は重機も大型になり、構造によってはアームの付け替えが発生する場合もあります。
重機を自社で保有していない業者はレンタルを利用しますが、工期が延びると費用も増加します。
現場の状況により内容が変動するため、事前確認が重要です。

母屋以外の構造物や設備を撤去する作業のことです。
工事費全体のおよそ2割を占めます。
敷地内の駐車場や納屋、ブロック塀に加え、庭木や岩の撤去も含まれます。
家屋に残された不用品を片付ける作業も対象です。
工事中に浄化槽や井戸、古い基礎などが見つかった場合、それらの処理費用も発生します。
母屋の解体と一緒に行われるため、事前に内容を確認しておくと安心です。

解体工事では大量の廃棄物が発生し、全体の約3割を処分費が占めます。
廃材はすべて産業廃棄物とされ、木くず・金属くず・燃え殻などに分けて専用のコンテナやトラックで処分場へ運搬します。
構造材や内装材なども分別し、種類ごとに処理する流れです。
建物の規模や構造で廃棄物の量が変わるため、見積もりでは「コンテナ〇個」や「トラック〇台」で算出されるケースが一般的です。
仕分けと運搬に手間がかかるぶん、費用にも差が出やすくなります。

解体後に残る地面の凹凸を整える作業です。
工事全体の1割ほどを占めます。
重機で表面をならす簡単な方法もあれば、砂利を敷く仕上げや防草シートで雑草を抑える方法もあり、内容はさまざまです。
駐車場や建物を建てる予定がある場合には、アスファルトやコンクリートでしっかり仕上げるケースも見られます。
使い方によって整地の内容が変わるため、解体前に施工業者と方向性を確認しておくと安心です。

解体工事にかかる費用は、構造や坪数・現場の条件によって差がありますが、全体としては100〜300万円ほどに収まる場合が多く見られます。
ここでは構造別に、坪単価や費用の目安を詳しく紹介します。

木造住宅の解体費用は、一般的に1坪あたり3〜4万円が相場です。
たとえば30坪の場合、おおよそ90〜120万円が目安になります。
ただし、道路の幅や近隣との距離によって坪単価が変わる点にも注意が必要です。
搬入が難しい場所では費用が高くなる傾向があります。
また、建物の規模が大きくなると、1坪あたりの単価は割安になるケースが多く見られます。
人件費や重機の使用料は一定のため、全体の費用が増えても単価が下がりやすくなるからです。
建物の広さによって単価に差が出る仕組みを理解しておくと安心です。

鉄骨造には、軽量鉄骨と重量鉄骨の2種類があります。
軽量鉄骨は戸建てや小規模アパートに多く使われ、坪単価は4〜5万円が目安です。
重量鉄骨はビルや大型マンションに用いられ、5〜6万円前後が一般的な相場です。
たとえば30坪の建物の場合、軽量鉄骨は約150万円、重量鉄骨は180万円前後が目安となります。
建物が大きくなるにつれて、同じ作業員や重機で効率的に進められるため、坪単価は下がりやすくなります。
構造や広さによって費用に差が出やすいため、早めの確認が重要です。

RC造（鉄筋コンクリート造）の建物は構造が非常に頑丈なため、解体費用も高くなる傾向があります。
坪単価はおおむね6〜8万円で、木造や鉄骨造よりも高めです。
木造や鉄骨造に比べて壊す手間が多く、工期も長くなりやすいためです。
30坪の建物の場合、180〜240万円程度が目安になります。
工法や立地条件によって費用に差が出る場合もあるため、詳細な見積もりが欠かせません。
構造に加えて、現場の状況も費用に影響するため、事前確認が重要になります。

ビルの解体費用は構造や規模によって大きく異なります。
坪単価も建物の種類ごとに差があるため、事前に相場を把握しておくと安心です。
ここではS造・RC造・SRC造それぞれの特徴と費用の目安を紹介します。

S造（鉄骨造）のビルは、柱や梁に鉄骨を使った構造で、解体費用の相場は1坪あたり3万5,000〜5万円ほどです。
鉄骨は廃材の量が少なく、処分しやすいため、全体の費用を抑えやすくなります。
小規模ビル（約86坪）なら300〜430万円、中規模ビル（約225坪）は790〜1,120万円前後が目安です。
大規模ビル（約1,127坪）になると、4,000〜5,600万円に達する場合もあります。
規模が大きくなるほど総額は高くなりますが、坪単価が下がる傾向もあります。
構造や面積に応じて見積もりを確認するのが重要です。

RC造（鉄筋コンクリート造）のビルは、鉄骨とコンクリートが一体になった頑丈な構造のため、解体費用が高くなる傾向があります。
坪単価は4万〜8万円が目安です。
小規模ビル（約86坪）なら約340〜690万円、中規模ビル（約225坪）は900〜1,800万円が目安です。
大規模ビル（約1,127坪）になると、4,500〜9,000万円に達するケースもあります。
設計図や構造の情報が不明な現場では、作業が複雑になりやすく、費用に差が出る場合もあります。
規模だけでなく、周囲の環境や立地条件も費用に影響を与えるため、慎重な確認が必要です。

SRC造（鉄骨鉄筋コンクリート造）は、鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた強固な構造で、高層ビルに多く採用されています。
解体費用の相場は1坪あたり4万5,000〜9万円です。
小規模ビル（約86坪）なら387〜774万円、中規模ビル（約225坪）は1,010〜2,020万円前後が目安です。
大規模ビル（約1,127坪）では5,000万円を超えるケースもあります。
階数が増えると足場や養生の手間が増え、費用も膨らみやすくなります。
構造や規模によって大きく変動するため、事前の確認が欠かせません。